2015/08/31

論文の査読と学会の座長

【論文の査読】
研究活動をしていると、学会のプロシーディングや論文の査読の仕事が回ってくることがあります。査読者の役割は専門家の立場から論文内容についてコメントすることであり、論文の採否を決めるのは編集者の役割です。この役割を勘違いすると、上から目線になったり、コメントが不適切になってしまいます。

現状の査読システムは持ち回り制なので、研究職に就いている以上、引き受けた方がいいですが、断るのも悪いことではありません。論文の題名が自分の専門から遠く、査読するのに知識や経験が不十分と判断したら、素直に理由を添えてお断りします。また、以前共同研究したことのある人や同じ研究室の仲間が著者の場合も断ります。多忙でしっかりと論文を読み込む時間がない時も断り、編集者に他の査読者を紹介します。査読内容は編集者に評価されて、関連雑誌の査読履歴にずっと残るので、雑に査読するなら請け負わない方が良いです。

雑誌社の要望に応じて、評価判断を変える必要があるので、査読を請け負ったら、どんな雑誌か事前にチェックします。雑誌社に応じて、科学的に価値があるか、研究内容は新しいか、論文の構成は整っているか、題目や参考文献は適切か、といった様々なチェック項目があります。その上で、著者にコメントを残します。査読はなるべく早く返します。

多くの論文でaccept, minor revision, major revision, rejectの4段階の評価があります。素晴らしい内容で改善の余地がない場合は、As isとして、acceptすれば良いです。多少の修正をすることで掲載する価値がある場合は、まず最初に論文の素晴らしい点を褒めた上で、修正点をリスト化します。査読者は、著者と一緒に論文の質を高めていく姿勢が大切です。また、論文の考察を否定するのはよくありません。納得がいかない場合は、不可解な点を列挙して、より詳しく説明してもらいます。よくある評価の一つは、問題提起に沿った実験を行い、解決に繋がるような結果が得られているかです。

どのように修正してもacceptできそうにない場合、rejectするかもしれません。その際、「データが信頼できないから」といった査読者の思い込み・押しつけの判断では、著者は決して納得できません。「定性的・定量的な評価が不足しており、○○といった点でより深く考察してはどうか」「他に同様の報告で優れた成果が既に出ており、その報告との違いが明確でないので、△△という点でもっと独自性を出してはどうか」といったように、具体的な指摘をすることを強くお勧めします。

査読をしていて気になった点があれば、「分野横断型の論文で□□の分野に詳しくないので、そこの部分は私のコメントが不十分かもしれない」とか「内容はよく書けているが、学術的すぎて本論文のような一般誌には合わないかもしれない」とか、編集者のみにコメントを残すこともできます。

論文査読の12のポイント
論文査読のポイント


【学会の座長】
学会に参加登録すると、会議の1か月前くらいに、運営側からの指名で座長の依頼が来る時があります。余程のことがない限りは承諾します。座長の仕事は、会議を滞りなく進めることです。時間管理と会場の雰囲気作りも仕事の一貫です。

座長には事前にプログラムのスケジュールと詳細版の予稿が渡されるので、発表内容を予習しておきます。想定よりも早く発表が終わった際や、参加者から全く質問がな買った際に、座長が質問することで時間調整するためです。発表者へのフィードバックになるか、参加者の理解が深くなるような質問を心掛けましょう。

当日は、15分ほど早めに行き、スタッフへの挨拶と会場の確認をします。部屋がうるさくないか、暑くないか、マイク、PC、プロジェクタ、レーザーポインタなどのAV機器が動作するか、チェックします。発表者と挨拶しつつ、発表データが全てPCに入っていることを確認します。欠席者がいないかも確認します。

国際会議では、発表後と質疑応答後に、発表者に意を表して拍手することが多いです。発表時間が伸びた時は、質問をなくしたり、短い質問一つに制限します。一方で、発表者がいない時は、ブランクにしたり、前の発表者の質問時間を延ばしたり、ひたすらトークするのもありでしょう。大御所による苦労話やその分野の発展の歴史などを話してもらうと、結構受けがいいです。


【講演奨励賞】
学会によっては、講演奨励賞候補にあがっている発表者一覧が渡される事があります。都合がつけば、候補者の発表を聞きに行って運営側に評価を伝えます。学会の予稿で受賞候補が絞られている場合もあるので、賞が欲しい学生は学会投稿の見切り発車は禁物です。日本の学会の場合は、会議中に積極的に"良い"質問をして、名前を売り込みましょう。候補に挙がったが僅差であった場合、普段の頑張りが評価者の印象に残り、良い方向に転ぶかもしれません。


【座長の挨拶例】
1. 初めの挨拶(自己紹介)
参加者全員に対して自己紹介を行い、セッション名と注意事項を伝えます。
"Welcome to session of the conference. I am AAA and will be your session chair. The first presenter is BBB. The title is CCC."
"Good morning. This session has a variety of the fields. I am AAA from DDD University. Let's start."
"Ladies and gentleman. I chair this session. My name is AAA. Presentation time is 10 min."
など。

2. 発表が長い時
"2 minutes"

3. 発表終了後
"This opens. Any questions and comments?"