2016/05/03

国際的な共同研究をする方法

【国際共同研究の流れ】
相手が作製済みの試料の一部がほしいというのであれば、気軽に共同研究を始められますが、今から相手に試料を作ってもらう(相手の時間も装置も使わせる)ときは、プロポーザルの準備をする必要があります。手順としては、以下になります。

1.アイデアを出す
2.提案書を作成する
3.共同研究提案のメールを送る
4.学会や現地訪問で相手と会う

アイデアは、一般的に、挑戦的な内容や流行の課題が喜ばれます。科研費執筆と同じで、その課題にどれだけ自分が近づいているか、実現可能性があるのかが重要になります。「太陽光発電の効率が30%を超える成果が出た。〇ができれば、さらに10%あげれるかもしれない」となると、〇ができる研究室は興味を持ってくれるでしょう。トップデータでなくても「人口光合成を世界で初めて水中で実現した。□ができれば、大気中でも実現できるかもしれない」というのでもいいでしょう。

提案書が最重要です。なるべくシンプルに、かつ具体的に書きます。普段は、スライド2ページ(研究目的/長所/課題、研究計画)を作製しています。スライド5ページであれば、研究目的/題名/協力者名、研究背景/最新情報、自分の成果の現状、提案内容、要望内容です。忙しい相手には1ページにまとめる方がいいです。提案を受ける側は「目的」と「要望」をみて、協力できるかどうかを判断してから、他の詳細を見ることが多いようです。

共同研究相手は、論文や学会で自分の求める技術を持っている人を探し、手当たり次第にメールを送ります。提案書の作成およびメール連絡をする側は学生でもOKですが、送り先は教授などの研究責任者にしましょう。最初は、人と人との繋がりが大きく、知り合いに紹介してもらうのが一番です。信頼できないと判断されると、提案書すらなかなか見てもらえないからです。会ったことがない相手には、自分の関連論文を添付すると信頼を得やすいです。

共同研究先として最も信頼できる相手は、素晴らしい論文を多数書き、分野を牽引するような大御所教授です。しかし、提案内容が良くても、忙しすぎて「Interesting」とだけ返信が来て放置されることがあります。確率を上げるには、准教授・助教あたりの研究者がおすすめです。大御所のラボ出身者だと特に良いです。比較的時間もあり、信頼も高いです。

研究室のホームページを作成するときは、研究内容以外に、
 ・どんな実験装置を持っていて何ができるか
 ・メンバーの名前と写真と自分のCV
 ・出版論文と国際会議
の3点を記載しておくことをお勧めします。共同研究先を探す際に、実験装置と材料や特性で検索することがあります。そこで見つけても信頼が低そうならスルーされるので、自分のCVと発表論文を書いておくことをお勧めします。メンバーと学会などで会っている可能性もあるので、彼らの名前と写真、連絡先をかいておくと、共同研究の提案を受ける可能性が上がってきます。

相手が決まれば、より詳しい議論や進捗報告のために訪問してみるのがいいです。設備次第では、提案内容以上の研究もできるかもしれませんし、なにより関係が深まります。仲がいいと、自分たちの要望を気軽に伝えられるし、一緒に仕事をしていて楽しくなります。


【もし海外に滞在するなら・・・】
日本にいても国際会議を通じて国際交流はできるじゃないか、と思われるかもしれません。実際は、そんなに簡単ではありません。国際会議だけで知り合った研究者は、浅い関係で止まりがちです。plenaryで招待されている海外の先生方どうし、同じ研究室出身であったり、ポスドクやサバティカルとしてお互いの機関に滞在経験があったり、友人関係にあることが多いです。世界中の研究者と強固な信頼関係を築けると、研究の幅が一気に広がります。共同研究だけでなく、自分の研究室の卒業生をポスドクとして紹介したり、教員として迎え入れたり、継続して関係が続いていたりします。国際会議でも聴講以外の時間は、仲の良い先生同士で、次のプロジェクトに向けたアイデア・情報交換を行っていたりしてします。そのプロジェクトの成果がまたplenary講演に繋がってくるわけです。

日本にいても(ノーベル賞クラスの)優れた研究成果は出せます。しかし、実験系の場合、やりたい研究をするにはお金が必要で、研究費がなければアイデア勝負になり、考えるための時間が必要になります。この国際的ネットワークに仲間入りするだけで、共同研究を通じて少ない予算で研究をスムーズに進めることができるので、時間(期限付きポスト)もお金(若手B・基盤Cくらい)も限られている若手研究者にとっては、大事な要素の一つになってきます。結果が出れば、自然と研究費がついてくるので、挑戦的な研究にも着手することができます。

国際的なネットワークの構築、充実した海外生活、海外経験の日本への還元の3点を一度に叶えることができるとすれば、「遊び仲間を作ること」だと思います。週末に旅行したり、一緒に飲んだり、パーティに呼ばれたりして仲良くなった友人関係は、帰国後も続きます。仲の良い友人ほど、共同研究の提案も非常にしやすいです。現地の情報や人々の考え方(政治・教育など)を深く知ることができます。なにより海外生活が楽しくなるので、作らないのはもったいないです。私は、研究で成果を出すのと同じくらい大事なことだと思っています。

滞在中のおすすめ
 ・習い事やイベントに積極的に参加し、国籍に関係なく友人をたくさん作る。
 ・論文を書いて、ボスや仲間と議論しまくる。
 ・相手の反応を待たず、相手が忙しくてもプッシュし、自分からアイデアを出しまくる。
 ・研究者としての行動・活動範囲を広げるため、国内外問わず研究費を出しまくる。

帰国後のおすすめ
 ・国際会議に参加して、海外の友人やボスとkeep in touchする。
 ・国際共同研究の提案をする。友人と仕事すると楽しいよ!
 ・海外経験を日本の職場・文化に合った形で提案する。


********メールの例***************
Dear Dr. Abroad Foreigner

I am a student in Kyoto University (Yukawa Lab.), Japan. Now I am challenging to demonstrate high-efficiency solar cells.

currently, solar cells suffer from XXXX (page 2). This project goal is " Solar cell with 40% efficiency". We achieved XXX (Page 3). Our idea for further improvement is to use XXX, which need XXXX (page 4).

We are wondering whether you have an interest in this project and your group could help us to make XXXX. We can financially support XXXX fee. Thank you.

Warmest Regards,
Dramaru